SESの多重下請け構造
SES業界においてたびたび問題視される、「多重下請け構造」。
多重下請けとは文字通り、
クライアント → 元請け企業 → 2次受け → 3次受け…n次受け
と、どんどん下請け企業に発注していく状態を表します。
2次請け、3次請けなどはごく普通で、場合によっては7次請け(!)など、多数の仲介業者が挟まっているケースも見受けられます。
関わってはいけないレベルの、多重下請け構造ですね…
多重下請けの問題点
この下請け構造で問題になるのが、「中抜き」です。
SESは中抜きされるって本当?ブローカーに一円も渡さず単価UPする方法。
間に挟まっている仲介企業が、「紹介料」などと称して、いわゆる中抜きをしているケースがほとんどです。
作業自体は下請け企業に丸投げしているにも関わらず、利益だけ抜いていきます。
当然、下層で受注する企業の利益が少なくなってしまいます。
SESはやめれば良い?
これだけ聞くと、SESの多重構造はメリットがなく、やめれば良いのではないか?と思いますよね。
ですが、業界の商習慣だったり、会社間のお付き合いなどがあるため、すぐに抜け出せない事情があるのです。
そのため、多くのSES企業では、下層で受注することを受け入れています。
この記事を執筆している筆者は、SE歴10年です。
SES・客先常駐も5年で、様々な現場を経験しました。
私がSESで現場に出ていたときも、「商流が深い」(下請けの下層)案件が中心でした。
多重下請けには、メリットも一部ありますが、基本的にはデメリットが多い契約形態です。
多重下請けとは無縁の会社もある
ここで、知っておきたい事実として、多重下請けとは無縁のSES会社もあります。
一方で、多重下請けを甘んじて受け入れている企業では、そのループから抜け出せなくなっているのもまた事実です。
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多重下請け構造の例
例えば、大手企業や官公庁からの大規模開発の場合を見てみましょう。
元請け→大手SIer
1次下請け→子会社や関連企業
n次下請け→SESメインの中小企業
大規模開発の場合、膨大な仕事量となり、多くの人員が必要となります。
そこで一部の仕事を、中小企業へ分割して振り分け、任せるのが下請け構造です。
下請け構造は開発規模が大きければ複雑化し、なかには4次下請け、5次下請けとなります。
何が問題なのか?と言いますと、一番の問題は、エンジニアの給与が上がりにくい点です。
中間マージンや、案件を紹介する営業マンの人的コストなどが発生して、エンジニアの取り分が少なくなってしまいます。
優秀なエンジニアであっても、SESの業態で働いているとなかなか給料が上がらない、という構造です。
多重下請け構造のメリット
多重下請け構造は、商流が深いことによって、デメリットばかり語られる印象もありますが、メリットがないわけではありません。
それらを解説していきます。
責任が薄い
成果物の納品に対しての責任は、元請け企業が担います。
一方で、下流の下請け企業は、SESで労働力を提供しているにすぎません。
そのため、人月単価の労働力を提供すれば良く、最終的な成果物への責任は負わないで済みます。
資本力の少ない、中小SES企業にとっては、プロジェクトがうまくいかなかった場合などに責任が降りかかることがないため、
売り上げを上げることができる上に、リスクの少ない事業形態となります。
中小SES企業間の相互互助機能
リソースの限られた中小SES企業にとって、多重請負の案件は、企業同士の相互互助としての役割を持っています。
自社のエンジニアだけでなく、他社のエンジニアも紹介できるため、回ってきた案件を取りこぼさずにアサインすることができます。
その逆に、自社のエンジニアを他社が持っている案件に回すこともできますね。
中小SES企業では、そもそもの案件数が少なかったり、自社で待機しているエンジニアの給与を払うのが重荷になるケースがあります。
そのため、案件を紹介し合うことで、お互いに助かる、というわけです。
さらに紹介料を払いあうことで、中抜きの費用はある程度回収できます。
多重下請け構造のデメリット
確かにメリットがないわけではない…のですが、
SES案件では、様々なデメリットを抱えています。
中抜き問題
間に挟まっている企業に、「中抜き」されてしまうため、エンジニアの取り分が少なくなります。
給与アップしにくい多重構造に、多くのエンジニアが、悩まされていることと思います。
ただし、間に挟まっている企業が、報酬を支払うべき仕事をしている場合には、それは対価として支払うべきでしょう。
他の案件も積極的に紹介してくれたり、まとめて数人のエンジニアをアサインしてくれたなどのケースです。
一方で、ただ案件を横流しするだけで、何も生産性のない企業が抜いているのは、これは単なる「中抜き」です。
残念なことに、単に中抜きするような企業が一定数存在しているのが、SES業界の抱える問題点の1つです。
生産性が上がりにくい
また、下層の企業のエンジニアは、クライアントとの打ち合わせなどはしません。
そのため、仕様の要求事項を深く理解することはできず、上層から流されてきた仕事をこなすだけになりがちです。
そのためモチベーションも上がりにくいので、労働生産性も下がり、ただ日々の作業をこなす、といった状態に陥りやすいのです。
またSESでは、人月単価での作業となります。極端な話をすれば、生産性が高くても低くても、もらえる単価は同じです。
ですので、ただ指示された作業を淡々とこなすという、受け身な仕事でもまかり通ってしまうのです。
底辺であるという事実
多重下請け構造の最下層である、という事実は、それを受け入れているエンジニアの自尊心を傷つけます。
場合によっては、「SESは底辺」などと言われてしまうこともあります。
ただ、あなたがもし20代、30代のエンジニアであれば、そこから這い上がるチャンスはいくらでもあります。
労働環境の悪化
さらに、途中階層の企業が自社の利益分だけを抜いて、実作業は全て下層企業に丸投げといった事態も起こります。
すると、下層企業は少ない利益で、多くの作業をこなさなくてはならず、残業や休日出勤など劣悪な労働環境の温床となるケースもあります。
商流飛ばしはできない!
では、いわゆる「商流飛ばし」によって、中抜きしている仲介企業を抜いて、直接契約してしまえば良いのではないか?という疑問も生まれます。
間に入った仲介業者を排除して、発注企業から直接仕事をもらうことはできないのでしょうか。
もちろん仲介企業にはその事実は伝えずに、こっそりと実施します。
当たり前ですが、間に仲介業者入っていたときよりも、高い金額で受注することができます。
「商流飛ばし」は違法ではありませんが、先述したように、SESで下請け案件を回し合うのは、中小企業同士の相互互助の側面もあります。
ですので裏切り者として、次の仕事が回ってこないなど、報復を受ける可能性もあります。
お付き合いもあるので、なかなかそのような手段は取れないのが、立場の弱い中小SES企業です。
相互互助から抜け出しても、やっていける場合はアリですが、
営業力の弱い中小SESではなかなかそうもいかないのが、実態です。
商流が深い案件を回しあう中小SES営業
私がSES案件に従事していた時は、
商流が深い、利益率の低い案件をお互いに回しあって、相互互助している中小SES企業を、
嫌という程、たくさん見てきました。
会社によって、エンジニアのスキルが様々ですので、お互いに回しあうことで、案件とエンジニアのマッチングの精度を上げることができますよね。
ですが、一方で相互に「紹介料」を支払っています。
こうした相互互助の仕組みは、一概に悪とはいえませんが、SESの多重下請け構造がなくならない原因にもなっています。
下層の案件スパイラル
同業者同士で、商流の深い案件を回しあっている…そういう会社は、今後ずっとそのままであることが多いですので、要注意です。
一旦多重階層スパイラルの下層で相互互助に入ると、なかなかその状態から抜け出せないというループにはまります。
一方で、そういった「横のつながり」とは無縁ながら、良質な1次請け案件をこなしている企業もいます。
プライム(1次請け)案件メインの企業
ここでお伝えしておきたい事実としては、
SESでは、必ずしも商流が深いわけではない、ということです。
ホワイトな優良SES企業って存在するの?見分け方を徹底解説。[現役エンジニアが語る]
企業規模は関係ありません。中小企業であっても、商流の浅い場所で、良質な仕事を受注している企業は存在しています。
プライム(1次請け)案件メインで立ち回っている企業も、存在しています。
どうせSESやるなら、そういった質の高い案件をメインに扱う会社でやりたいですよね。
そういった企業では、そもそも商流が浅いので、「商流飛ばし」など無縁ですし、商流の深い案件を回しあう、無益な営業大会から卒業することができます。
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